AIがツールを使うための共通規格「MCP」が、静かに”インフラ”になった。公式レジストリに登録されたサーバーは2026年6月時点で約9,600件。対応アプリもChatGPT、Gemini、Claude、VS Codeと主要どころが出そろった。
結論から言うと、いま人気を集めるMCPサーバーの上位は「ブラウザを動かす系」と「公式製」に二極化している。本記事ではGitHubのスター数を2026年7月10日時点で実測し、トップ10と選び方をやさしく整理する。
トップ10をスター数で実測する(2026年7月)
ランキングは伝聞ではなく、GitHub APIから取得した実数で作った。まずは全体像から見てほしい。
| 順位 | サーバー | スター数 | 何ができるか |
|---|---|---|---|
| 1 | 公式リファレンス集(modelcontextprotocol/servers) | 88,303 | ファイル操作・Web取得など基本セット |
| 2 | Context7 | 58,859 | 最新のライブラリ文書をAIに渡す |
| 3 | Chrome DevTools MCP | 46,603 | AIがChromeを操作・デバッグ |
| 4 | Playwright MCP | 34,918 | ブラウザの自動操作(Microsoft製) |
| 5 | GitHub MCP | 31,337 | Issue・PRの読み書き(GitHub公式) |
| 6 | Serena | 26,288 | コードを意味で検索・編集する |
| 7 | AWS MCP | 9,417 | AWS各サービスの操作(AWS公式) |
| 8 | Firecrawl MCP | 6,903 | Webページの収集・整形 |
| 9 | Notion MCP | 4,511 | Notionの読み書き(Notion公式) |
| 10 | Cloudflare MCP | 3,933 | CDN・エッジ環境の操作 |
規模感を図にすると、上位の差がよく分かる。2位のContext7でも、公式コレクションの3分の2ほどだ。
そもそもMCPは何を解決したのか
MCPが生まれる前、AIに外部ツールをつなぐ方法はアプリごとにバラバラだった。ChatGPT用に作った連携はClaudeでは動かない。開発者は同じものを何度も作り直していた。
仕組みはシンプルで、間に「共通語」を挟むだけだ。AI側はMCPの話し方さえ知っていれば、相手がGitHubでもNotionでもブラウザでも同じ作法で使える。
図: MCPは「AIとツールの通訳」として真ん中に立つ
転機は2025年だった。OpenAIが3月に、Googleが4月に対応を表明し、規格争いが起きる前に大手が相乗りした。そして2025年末、AnthropicはMCPをLinux Foundation傘下の「Agentic AI Foundation」へ寄贈。特定企業のものではない、中立の標準になった。
anthropic.com Donating the Model Context Protocol and establishing the Agentic AI Foundation MCPの寄贈を発表したAnthropic公式ブログ。OpenAIやBlockと共同で財団を設立した経緯が読める一次情報。上位の顔ぶれが示す「AIの手」の進化
ランキングをよく見ると、傾向が2つ読み取れる。
ひとつは「ブラウザを動かす系」の強さだ。3位のChrome DevTools MCPと4位のPlaywright MCPを合わせると8万スターを超える。文章を書くだけだったAIが、画面を見てクリックし、フォームを埋める。「AIの目と手」への需要が、数字にはっきり表れている。
もうひとつは「公式製」の増加だ。GitHub、AWS、Notion、Cloudflareと、ツールの本家が自らMCPサーバーを出すようになった。有志の非公式版に頼っていた1年前と比べると、安心して選べる土壌が整いつつある。3DソフトのBlenderにも公式MCPアドオンが登場しており、この流れは開発ツールの外にも広がっている(詳しくは過去記事「BlenderにAIを入れる」で扱った)。
2位のContext7は毛色が違い、AIに「最新の取扱説明書」を読ませるサーバーだ。AIの知識は学習時点で止まっているため、新しいライブラリの使い方を間違えやすい。その弱点をピンポイントで埋めたことが、6万スター近い支持につながった。
スターの数は「安全」を保証しない
ここまで人気を見てきたが、水を差すようで恐縮ながら、注意点も具体的に書いておきたい。
まず、MCPサーバーはAIに実際の権限を渡す仕組みだ。ファイルを読むサーバーは、あなたのファイルを読める。悪意ある指示を仕込んだWebページをAIに読ませ、そこから操作を乗っ取る「プロンプトインジェクション」という攻撃も現実に報告されている。
次に、乱立の問題がある。公式レジストリだけで約9,600件。同じ用途のサーバーが何十個もあり、中には更新が止まったものや、出どころの怪しいものも混ざる。スターが多くても、最終更新が1年前なら選ぶべきではない。
選ぶ基準はシンプルでいい。①できるだけ公式製を選ぶ、②最終更新日を確認する、③必要最小限の権限だけ渡す(読み取り専用トークンで足りるなら書き込み権限は付けない)。この3つを守るだけで、リスクの大半は避けられる。
まず挿すならContext7・GitHub・Playwrightの3本
筆者は、初めての人が入れるべきはContext7、GitHub MCP、Playwright MCPの3つだと見ている。「知識の更新」「仕事の置き場」「画面の操作」という、AIに足りない3要素をちょうど1本ずつ補えるからだ。
USB-Cが普及したとき、ケーブルを1本ずつ買い替えた感覚を思い出す。全部を一度にそろえる必要はない。まず1本挿して、AIが「読むだけの相手」から「手を動かす相棒」に変わる感覚を試してみてほしい。Claude Codeを使っているなら、設定の基本は過去記事「Claude Codeの便利コマンド集」も参考になるはずだ。
registry.modelcontextprotocol.io MCP公式レジストリ 公開MCPサーバーの公式カタログ。用途で検索でき、本記事で挙げたサーバーもここから辿れる。出典: Anthropic「Donating the Model Context Protocol」 / Agentic AI Foundation – Model Context Protocol / スター数はGitHub APIによる筆者実測(2026年7月10日時点)




