「Marvellは次の1兆ドル企業だ」——6月2日、台北のComputex 2026でNVIDIAのジェンスン・フアンCEOがそう言い切った。名指しされたMarvell Technology(マーベル)の株価は急騰。しかし日本では「そもそも何の会社?」という人が大半だろう。
結論から言うと、MarvellはAIデータセンターの「配線と専用チップの黒子」だ。GPUの派手な主役合戦の裏で、主役同士を繋ぐ神経網を握っている。
何をしている会社か
事業は大きく2本柱だ。1つはカスタムAIチップ(ASIC)の設計請負。クラウド大手が「自社専用のAIチップが欲しい」と思ったとき、設計面で伴走するのがMarvellで、現在10社以上の顧客と50件を超える案件を抱えるという。もう1つは光インターコネクト——数万個のGPUを結ぶ超高速の光配線技術で、1.6テラビット級の次世代規格を先導する。直近四半期のデータセンター売上は18.3億ドルで、全売上の76{5d2e0584b3bb9387985c426bb791d5e5042ce0c301311590ba932b19116644e7}を占める。
NVIDIAはなぜ持ち上げるのか
発言の3ヶ月前、NVIDIAはMarvellに20億ドルの戦略出資をしている。自社エコシステム(NVLink Fusion)にMarvellのカスタムチップ技術を取り込む提携で、「ライバルになり得る黒子を、身内に引き込んだ」構図だ。MetaのIrisのように大手が自社チップへ向かう流れは、GPU販売にとって逆風にもなり得る。その設計需要をMarvell経由で自陣に繋いでおく——フアン氏の「兆ドル」発言は、応援であると同時に囲い込みでもある。
「兆ドル」までの距離
現在の時価総額は約2,150億ドルで、1兆ドルには約4.7倍の成長が要る。直近の会計年度は売上81.95億ドル(+42{5d2e0584b3bb9387985c426bb791d5e5042ce0c301311590ba932b19116644e7})、調整後EPS+81{5d2e0584b3bb9387985c426bb791d5e5042ce0c301311590ba932b19116644e7}と勢いはあるが、道のりは長い。
xenospectrum.com NVIDIA CEOが”次の兆ドル”企業と呼んだMarvell: その技術的根拠とは何か Computexでの発言の背景を、光通信技術の観点から深掘りした日本語解説。割り引いて読むべき点
「NVIDIAのお墨付き」は諸刃の剣だ。出資者のCEOが投資先を褒めるのは自然なことで、中立な評価ではない。カスタムチップ市場ではBroadcomという巨人が先を走り、競争は激しい。株式市場の「次のNVIDIA」探しは過熱しやすく、期待が先行した銘柄の反動も歴史が教えるところだ。
主役より黒子を見よ
AIブームの利益は、モデルを作る会社→GPUを作る会社→それらを繋ぎ支える会社へと、川下から川上へ広がってきた。筆者は、Marvellが本当に兆ドルへ届くかより、「配線とカスタムチップが主戦場になった」という地殻変動のほうが本質だと見ている。メモリ、配線、電力——AIの制約条件を握る黒子たちから、目が離せない。





