AIの電力不足を解決する場所は、地上ではなく宇宙かもしれない。NVIDIAが支援するStarcloudは2025年11月、H100 GPUを積んだ衛星を打ち上げて軌道上でのAI計算を実証した。GoogleはTPU衛星の編隊「Project Suncatcher」を発表し、SpaceXに至っては最大100万基の軌道データセンター衛星を構想していると報じられている。
SFに聞こえるが、各社がFCC(米連邦通信委員会)への申請や実証機の打ち上げという「実務」を始めているのが2026年の現在地だ。
なぜ宇宙なのか: 電気と冷却の問題
理由はシンプルで、太陽光が地上より約1.4倍強く、24時間近く当たり続ける軌道があるからだ。地上のデータセンターが直面する「電力網の限界」「冷却水の確保」「用地の反対運動」が、宇宙にはない。Starcloudは長期的に1kWhあたり0.05ドル——地上並みの電力コスト——を目標に掲げる。
図: 軌道上データセンターの基本構造
主要プレーヤー比較
| 企業/計画 | 規模(計画・申請) | 現在地 |
|---|---|---|
| Starcloud(NVIDIA支援) | 約88,000基 | 2025年11月にH100衛星で実証済み。評価額11億ドル |
| Google「Project Suncatcher」 | TPU衛星の編隊 | 2027年初頭に実証予定。10Tbps級の光通信で接続 |
| SpaceX | 最大100万基 | FCCへ申請と報道。xAIのインフラとしても構想 |
| Blue Origin「Project Sunrise」 | 約51,600基 | 申請段階 |
| Cowboy Space「Stampede」 | 最大20,000基 | 2026年5月にFCC申請。2.75億ドル調達 |
規模感を並べると、SpaceXの構想がいかに桁外れかが分かる。
冷静に見るべき課題
課題も山積みだ。真空では空気で熱を逃がせず、巨大なラジエーターが要る。故障してもすぐ修理には行けない。打ち上げコストはStarshipの再利用が前提の計算が多く、スケジュールが崩れれば経済性も崩れる。そして数十万基級の衛星群は、天文観測やスペースデブリの観点で摩擦を生むだろう。「電力問題の出口」と「宇宙環境の入口」が同じ扉なのだ。
forbesjapan.com エヌビディアがAI搭載衛星を11月に打ち上げ、次世代インフラ「宇宙データセンター」の時代が始まる Starcloud実証の経緯と各社の動きを日本語で丁寧に追った記事。AIの「土地問題」は空へ向かう
メモリの高騰と同じく、AIのボトルネックは計算そのものから「電気・土地・部材」へ移っている。宇宙データセンターはその最も大胆な回答だ。筆者は、2027年のGoogle実証が試金石になると見ている。成功すれば、クラウドのリージョン一覧に「orbit-1」が並ぶ日は冗談ではなくなる。
出典: Forbes JAPAN / Ledge.ai(Starcloud) / 日経クロステック(Google Suncatcher)





