総務省が2026年7月に公表した令和8年版の情報通信白書に、驚くべき数字が載った。日本の生成AI利用経験率は58.8%と、前年の26.7%から倍増。そして最年少区分の15〜19歳は91.7%——全年代でトップに立った。
もう「若者もAIを使い始めている」という段階ではない。使っていない10代を探すほうが難しい。そして各社の調査を重ねると、もうひとつの事実が浮かぶ。10代は使う量だけでなく、使い方が大人と違う。大人は「検索」、10代は「勉強」なのだ。
91.7%——白書が示した世代の断層
1年で26.7%から58.8%へ。普及曲線でいえば、崖のような立ち上がりだ。スマートフォンの普及期と重ねても、この速度は異例である。そして年齢が下がるほど数字が上がる、きれいな階段ができた。
数字の階段は1年かけて積み上がった
白書の数字は突然出てきたわけではない。この1年の各社調査を並べると、階段が見える。調査ごとに「使ったことがある」「いま使っている」など定義が違うので、その点は割り引いて読んでほしい。
| 調査 | 時期 | 10代・若年層の数字 |
|---|---|---|
| LINEリサーチ(15〜69歳) | 2025年6月調査 | 10代の現在利用率6割弱(全年代トップ) |
| LINEヤフー Z世代定点(15〜24歳) | 2025年9月→12月 | 利用率80.2%→83.1% |
| モバイル社会研究所 | 2026年2月 | 全体51%(前年27%)。中学生も4割超 |
| 総務省・令和8年版白書 | 2026年7月公表 | 15〜19歳 91.7%(利用経験) |
大人は「検索」、10代は「勉強」
量よりも面白いのは質の違いだ。LINEリサーチで利用目的を聞くと、全体の1位は「検索や調べもの」で6割強。ところが10代だけは1位が「勉強や学習のサポート」で7割弱になる。MMD研究所の高校生調査でも、最多の使い道は「宿題や課題の答えを調べる」(34.2%)だった。
大人にとってAIは検索の置き換えであり、仕事の道具だ。10代にとっては、隣で一緒に宿題を見てくれる存在に近い。使うサービスはChatGPTが74.6%で一強、10〜20代では8割を超える。もうひとつ気になるデータもある。10〜30代の女性では「会話や雑談の相手」という回答が4割前後に達する。AIとの関係が道具を越えていく話は「気づいたら、AIと恋に落ちていた」で書いたとおりで、教育とはまた別の論点として動き続けている。
prtimes.jp 【LINEリサーチ】生成AIの認知度は9割強! 利用率は10代で最も高く6割弱 一次情報。年代別・男女別のグラフが揃っており、「10代だけ目的が違う」の出どころを確認できる。学校は「禁止」から「使わせ方」へ
教育の現場も、すでに禁止か解禁かの議論を越えている。文部科学省は2024年末にガイドラインを改訂し、リスク管理を前提とした活用の手引きへ舵を切った。中学生の利用も1年で約3倍に増えたという調査がある以上、「学校の外では全員使っている」を前提に組み立てるしかない。
「宿題の答えを調べる」には、当然ながら光と影がある。解き方を対話で教わる生徒と、答えを丸写しする生徒は、同じ34.2%の中に同居している。道具は同じでも、学びになるかどうかは問いの立て方次第——これは大人のAI活用と、まったく同じ構図だ。
「AIで勉強した世代」が入社してくる
筆者が面白いと感じるのは、この数字の数年後だ。91.7%の15〜19歳は、あと数年で大学を出て、職場にやってくる。彼らにとってAIに聞くことは、電卓を叩くのと同じ、思考の標準装備だ。新人がAIを使うことに驚く側と、使わない職場に驚く側——ギャップはたぶん、採用面接から始まる。
彼らが履歴書を書くとき、「特技」の欄にAIとは書かれないだろう。空気のように使っているものを、人は特技と呼ばないからだ。
出典: 総務省「令和8年版 情報通信白書」 / LINEヤフー(LINEリサーチ)公式リリース / モバイル社会研究所 / MMD研究所(高校生調査) / 文部科学省(生成AIガイドライン)





