同じ32GBのメモリが、2025年の秋には1万円台だった。それが2026年7月のいま、3〜4倍の値札が付いている。自作PC界隈では「メモリだけで本体が買えた値段」という嘆きが冗談にならなくなった。
そして、これはPCパーツだけの話では終わらない。調査会社IDCは、悲観シナリオで2026年のスマホ・PCの平均価格がともに約8%上がると予測している。この記事では「なぜこうなったか」を短く押さえたうえで、いちばん知りたいこと——いつまで続くのか、いつ買えばいいのか——に絞って整理する。
- 現状: メモリ価格は2025年秋比で3〜4倍。1月ピーク→春に一服→7月に再上昇の気配。
- 原因: AI向けメモリ(HBM)に生産が吸われ、さらに月90万枚のウェハ契約が需給を壊した。
- 出口: Micronは「2026年中は供給不足」と明言。転機は2027年1〜3月が最有力。
「3倍」の実感——いま店頭で起きていること
値動きを時系列で見ると、この高騰には波がある。2026年1月にいったんピークを付け、春には少し息をついた。「もう下がるのでは」と期待された6月に下落は止まり、7月に入って再び上向きはじめた——これがいまだ。
影響は自作PCにとどまらない。メーカー製PC、スマホ、ゲーム機まで、メモリを積むものすべてが値上げ圧力を受けている。米国では「価格が高すぎる」としてメモリ大手3社を相手取る訴訟まで起きた。それほどの異常事態だ。
犯人は一通の契約書——月90万枚の衝撃
高騰の構造は単純だ。AIデータセンター向けの高級メモリHBMが儲かるので、メーカーが生産ラインをそちらへ振り向け、私たちが使う普通のメモリの生産が細った。この構造は以前の記事で詳しく解説したとおりだ。
それに追い打ちをかけたのが、2025年10月3日の一通の契約だ。OpenAIがSamsungとSK hynixから毎月ウェハ90万枚分という桁外れのメモリ供給契約を発表。慌てた他社が我先にと契約を積み増し、2社が手一杯になった結果、契約を結んでいなかったMicronに注文が殺到した。世界のメモリの蛇口は実質3社しかない。その3社すべてが「予約で満席」になったのが、いまの品薄の正体だ。
出口は「2027年1〜3月」説が最有力な理由
では、いつまで続くのか。当事者の言葉がいちばん重い。Micronは決算説明で「2026年中は供給が需要に追いつかない」と明言した。同社の前年比+346%という決算は、裏を返せば「それだけ品不足が深刻」ということでもある。
一方で、出口の目安も見えている。各社が増産投資した新しい生産ラインの供給分が市場へ流れ始めるのが2027年の第1四半期(1〜3月)末ごろ。ここから急激に供給が増え、品余りに転じて値下がりが始まる——というのが業界メディアの共通した読みだ。メモリ価格は野菜と似ている。天候(需給)が戻れば値は下がるが、畑(工場)を増やすには1年かかる。いままさに、畑が育つのを待っている段階だ。
で、いつ買えばいいのか——3つの答え
結局の買い時は、あなたの状況で決まる。判断基準を3パターンに整理した。
| あなたの状況 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| PCが壊れた・仕事で今すぐ必要 | 今買う | 年内の値下がりは期待薄。待つだけ損 |
| 急がないが1年以内には欲しい | 2027年春以降まで待つ | 2027年Q1末から供給急増の見込み |
| メモリ増設だけしたい | 中古・保証付き整備品も視野に | 新品高騰時は中古市場に値ごろ感が出やすい |
筆者は「急がないなら待つ」派だ。いまは歴史的に見ても異常な高値圏で、高値づかみのリスクが大きい。逆に、必要に迫られているなら腹をくくって買っていい。「もう少し待てば下がるかも」と半年悩む時間のほうが、差額より高くつく。
カレンダーに入れておきたい2つの日付
最後に、今後の値動きを占ううえで見ておくべき日付を2つ挙げておく。ひとつはMicronの四半期決算(次回は2026年9月下旬)。「供給不足」の文言がいつ消えるかが最大のシグナルだ。もうひとつは2027年3月末。供給急増説の答え合わせの時期で、ここで下落が始まらなければ高止まりシナリオに切り替わる。
メモリの値段は、いまやAIブームの体温計になった。この2つの日付をチェックしながら、焦らず出口を待ってほしい。
出典: PC Watch「AI巡るメモリ争奪戦——2026年はPC、スマホに”冬”が到来」 / Forbes JAPAN「2026年『スマホとパソコン価格急騰』の見通し」(IDC予測) / EE Times Japan「LPDDRが足りない」。価格・見通しは2026年7月11日時点。





