「この資料全体で、いちばん多く語られている問題は何?」——ふつうのRAGは、この手の”全体像”の質問が苦手だ。関連するページを1枚ずつ探すのは得意でも、答えがどの1枚にも書かれていないと、とたんに弱くなる。そこを補うのがGraphRAG(グラフラグ)。Microsoftが公開して一気に広まった、RAGの進化形だ。
ちがいは一言でいえば「点で探すか、地図で読むか」。まずは前提として、RAGの基本を押さえておくと理解が早い。では、GraphRAGは何をしているのか。
GraphRAGは「関係の地図」を先に描く
ふつうのRAGは、質問に意味が近い文章のかたまりを探してくる「点の検索」だ。対してGraphRAGは、資料を読み込む段階で「誰が・何と・どう関係しているか」を抜き出し、知識グラフ(関係の地図)を先に作っておく。さらに、関係の濃いかたまり(コミュニティ)ごとに要約も用意する。だから「全体で繰り返し出てくるテーマは?」のような、点ではなく面で答える質問に強い。Microsoftはこれを「文章の抽出・ネットワーク分析・要約を一つにまとめた仕組み」と説明している。
通常RAGとの使い分け
| 観点 | 通常のRAG | GraphRAG |
|---|---|---|
| 探し方 | 意味が近い文章を「点」で検索 | 関係を「地図」にして構造で読む |
| 得意な質問 | ピンポイントの事実確認 | 全体像・複数の事実をつなぐ推論 |
| コスト | 軽い(すぐ導入できる) | 重い(地図づくりに多くの処理) |
注意したいのは、GraphRAGは万能薬ではないという点だ。地図を作るには大量のAI処理が必要で、コストは通常RAGより重い。Microsoft自身も、費用を抑えた軽量版(LazyGraphRAG)を後から出しており、コストが弱点なのは公式も認めるところだ。筆者の考えでは、GraphRAGは通常RAGを置き換えるものではなく、使い分ける道具である。細かい事実確認は通常RAG、全体を俯瞰する問いはGraphRAG——と役割を分けるのが現実的だ。
microsoft.com Project GraphRAG(Microsoft Research) GraphRAGの公式解説とオープンソース実装。仕組みを一次情報で確認したいならここ。「地図」の下には、意味の設計図がある
GraphRAGが描く知識グラフは、放っておけばただの点と線の寄せ集めになりかねない。そこに「この点はどんな種類で、この線はどんな意味か」という設計図を与えるのがオントロジーだ。RAG→GraphRAG→オントロジーとたどると、AIに知識をきちんと扱わせる流れが一本の線でつながって見えてくる。全体像を問われる仕事が増えるほど、この「地図で読む」発想の価値は上がっていくだろう。
出典: Microsoft Research「GraphRAG」 / GitHub: microsoft/graphrag。2026年7月14日時点。ベンチマーク数値は出典により幅があるため本文では割愛。





