AIの巨大データセンターを、次はどこに建てるべきか。Metaが出した答えは、シリコンバレーでも東海岸でもなく、カナダ・アルバータ州の油田地帯だった。
7月8日(現地時間)、Metaはカナダ初となるAIデータセンターの建設を発表した。投資額は130億カナダドル(約1.4兆円)超、電力規模は1ギガワット。同社33番目にして、米国外では最大の施設になる。
油田の州に建つ1ギガワット
建設地はエドモントン北郊のスタージョン郡。広さ約1,750エーカー(東京ドームおよそ150個分)の敷地に、建設ピーク時で約3,000人が働く。稼働後も300人以上の常勤雇用が生まれ、州には年間2.5億カナダドル以上の税収が入る見込みだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 場所 | アルバータ州スタージョン郡(エドモントン北郊) |
| 投資額 | 130億カナダドル超(約92億米ドル) |
| 電力規模 | 1GW(約80万世帯分。エドモントン市全体の消費に迫る) |
| 雇用 | 建設時 約3,000人 / 稼働後 300人以上 |
| 位置づけ | Meta 33番目のDC・米国外最大・カナダ初 |
| 電源稼働 | 併設ガス発電所は2030年後半予定 |
「電気は自前で持ってこい」——アルバータ方式
なぜアルバータなのか。答えは電力の調達方法にある。同州はデータセンター誘致で「bring your own power(電源は自分で持ってこい)」という割り切った方式を採る。送電網の空きを奪い合うのではなく、事業者が発電所ごと建てて、その費用も全部払う。
Metaはこのルールに乗り、パイプライン大手Pembinaが新設するガス発電所から電気を引く。地元で安く採れる天然ガスを1日あたり約1.5億立方フィート燃やす計画で、寒冷な気候は冷却コストも下げてくれる。AIデータセンターの立地争いが「土地」ではなく「電気の確保合戦」になった象徴と言える(この構図は過去記事「データセンター関連銘柄まとめ」でも扱った)。
発表当日の現地ニュースは、州首相が同席した式典の様子を伝えている。
「100%クリーン」の看板と、ガス火力の実態
ただし、この計画には無視できない緊張がある。Metaは「100%クリーンで再生可能なエネルギーでマッチングする」と発表した。だが物理的に施設を動かすのは、新設の天然ガス発電所である。
「マッチング」とは、使った電力量に相当する再エネ証書を購入して帳簿上相殺する仕組みのこと。看板に嘘はないが、煙突から出るものが消えるわけではない。環境シンクタンクのPembina Instituteは「ガス需要を人為的に生み、家庭の電気代を押し上げる」と批判し、アルバータの送電網の排出強度がカナダ平均の約5倍である点も指摘されている。
水については、Metaは閉ループ液冷の採用で「年間の水使用はゴルフ場1つ分以下」と説明する。もっともこれは同社側の主張で、第三者の検証はこれからだ。
帳簿の上のクリーンは、いつまで通用するか
この案件、筆者の目には「AIインフラの本音が出た発表」と映る。理想の電源を待つより、いま確実に手に入る電気を選ぶ。その本音と「クリーン」の建前をどう両立させるかは、Metaだけでなく業界全体の宿題だ。
再エネ証書という「帳簿の上のクリーン」を、規制当局と世論はいつまで認めるのか。1GWの巨体が完成する2030年ごろ、この問いへの答えは今と同じだろうか。データセンターの立地選びの全体像は、近日公開予定の解説記事で改めて掘り下げる。
出典: Meta公式ニュースルーム(2026年7月8日) / CNBC / CBC。投資額はカナダドル・米ドルの表記が媒体により異なるため、C$13B超(約US$9.2B)で統一した。





