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マイクロンの何がすごいのか | 前年比+346%決算と、広島に眠る心臓部

更新: 2026年7月18日

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半導体ウェハ上に並ぶダイのクローズアップ(DRAM/HBM製造のイメージ)

2012年、日本最後のDRAMメーカー・エルピーダメモリが倒産した。負債4,480億円、戦後最大級の製造業破綻。その広島工場を買い取った米マイクロンが、13年後の2026年、時価総額1兆ドルを突破した。しかも「初めてのHBM生産ウエハは広島で作った」と、CEO自らが明かしている。

いまマイクロンの何がすごいのか。決算の数字と、日本に眠るその心臓部から読み解く。

前年比+346%——決算がバグっている

まず数字を見てほしい。2026年5月締めの四半期(6月発表)で、マイクロンの売上は414.56億ドル、前年同期比プラス346%。粗利率84.9%は過去最高だ。売上のケタが1年で変わった。

2025年8月期(四半期)113億ドル
2026年2月期239億ドル
2026年5月期415億ドル

図: マイクロンの四半期売上の推移(SEC提出の決算資料より)

次の四半期は売上500億ドルを見込む。1年前の「通期売上」を、1四半期で超える計算だ。株価も2024年末の84ドルから2026年6月には一時1,255ドルへ。UBSが目標株価を535ドルから1,625ドルへ引き上げたことが引き金になり、5月に時価総額1兆ドルの大台に乗った。

HBMという「AIの一等地」で4%→21%

この急成長の源泉はHBM(AI用の超高速メモリ)だ。NVIDIAのAIチップに必ず貼り付く部品で、需要は青天井。マイクロンはここで、市場シェアを2024年の4%から2025年には21%へ、たった1年で引き上げた。

先頭を走るのはSK hynix(先日ナスダックに上場した)で約6割。だがマイクロンは、旧世代のHBM3を丸ごと飛ばしてHBM3Eで先行するという博打に勝ち、一時サムスンを抜いて2位に立った。2026年のHBM供給は「価格・数量とも契約完了」、つまり実質的に作る前から完売している。


なぜ「米国唯一」が効くのか

もうひとつの強みは立ち位置だ。マイクロンは米国唯一のメモリメーカー(米商務省の公式文書に明記)。半導体を安全保障の問題とみなす米国にとって、国内にメモリの作り手がいる意味は大きく、CHIPS法で61.65億ドルの直接助成が確定している。2026年7月には、米国投資を2035年までに2,500億ドル超へ増やすと発表した。

SK hynixが韓国の資本市場を飛び越えて米国で巨額を調達したのとは対照的に、マイクロンは「米国メーカーである」こと自体が地政学的な資産になっている。同じHBM三つ巴でも、各社が握るカードは違う。

心臓は、広島にある

そして日本人として見逃せないのが広島だ。マイクロンは最先端DRAMの製造にEUV露光装置を日本で初めて量産導入し、その心臓部を広島に置いた。2025年には政府補助が最大5,360億円に拡大し、総投資は約1.5兆円規模。2026年7月4日には新棟の起工式が行われ、1,000人超の新規雇用が生まれる。

倒産で消えた「日本最後のDRAM」の工場が、13年を経てNVIDIAを支えるメモリの発祥地になった。筆者は、これを単なる外資の設備投資と見るべきではないと考えている。日本の製造業が失ったと思われた最先端メモリの技術と人材が、看板を替えて世界の最前線で生き続けている——マイクロンのすごさは決算の数字だけでなく、この「敗戦からの再生」の物語にもある。半導体と資本の関係は「ベインがキオクシアを全売却」でも別の角度から書いた。

ただし新棟の稼働は2028年度後半以降で、HBMのどの工程まで広島で担うかは未確定だ。「日本がHBM大国になる」と結論を急ぐのは、まだ早い。HBM・ファウンドリを含む業界の全体像は「AI半導体・データセンター完全ガイド」でどうぞ。


出典: マイクロン FQ3-26決算(SEC提出) / HBM4量産発表(公式) / 経産省 認定計画(広島・1.5兆円)。HBMシェアは調査会社・基準で変動する。

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