Googleが7月9日、広告における生成AI利用の「開示」を始めた。海外メディアの見出しには「義務化」の文字が躍ったが、中身を読み込むと、その呼び方はまだ早い。正直に言えば「半分だけ義務化」である。
何がどこまで表示され、どこに抜け穴が残ったのか。広告を「見る側」の視点で整理する。
3タップで見られる「広告の出自」
ユーザー側の変化はシンプルだ。検索結果・YouTube・Discoverに出る広告の情報アイコン(3点メニュー)を開くと、「My Ad Center」パネルに「How this ad was made(この広告の作られ方)」という項目が加わる。生成AIで作成・編集された広告なら、そこに明記される。
これまでGoogleがAI開示を義務づけていたのは選挙広告だけだった(2023年11月〜)。それが全カテゴリの広告に広がった点は、確かな前進と言える。
仕組みは2段構え——そして抜け穴も2段構え
| 広告の作り方 | 開示方法 | チェック体制 |
|---|---|---|
| GoogleのAI広告ツールで作成 | Googleが自動で開示を付与 | システムで確実 |
| 他社のAIツールで作成 | 広告主が入稿時に自己申告 | Googleは検証しない |
| EU・インド・NY州向け配信 | 広告上に見えるラベルを直接表示 | 地域規制で必須 |
問題は2行目だ。他社ツールで作った広告の開示は自己申告で、Googleは申告内容を検証しないと海外メディアは明確に報じている。つまり「AIを使ったと正直に言う広告主の広告にだけ、ラベルが付く」。正直者にだけ印が付く逆転現象で、海外メディアには「広告主が認めれば表示される」と皮肉られた。
違反時のペナルティも現時点で公表されていない。「義務化」と呼び切れない理由がここにある。
Meta・TikTokと並べると、Googleの弱点が見える
他のプラットフォームはどうか。Metaは2024年から政治・社会問題広告でフォトリアルなAI生成物の開示を義務化し、違反広告は不承認にする。TikTokは2024年5月からC2PAという技術でAI生成コンテンツを自動検出し、ラベルを機械的に貼っている。
並べると構図がはっきりする。TikTok=自動検出、Meta=政治広告では強制、Google=検証なしの申告制。3社の中でGoogleの仕組みがいちばん「性善説」に寄っている。AI生成物の権利や信頼の問題は、CanvaのAI機能の記事で書いた「商用OKと安心は別物」という話ともつながる。
本当の締め切りは8月2日にやって来る
ではなぜGoogleは今、このタイミングで動いたのか。カレンダーを見れば察しがつく。2026年8月2日、EUのAI法(AI Act)の透明性義務が適用開始となる。EU・インド・NY州だけ可視ラベルが必須なのは、各地域の規制への先回りだ。
この「検証なし申告制」が長続きするとは、筆者にはどうも思えない。規制が固まり、C2PAのような来歴技術が普及すれば、自動検出への移行は時間の問題だ。今回の発表は完成形ではなく、8月2日を前にした「最初の一手」として眺めるのが正確だろう。
出典: Google公式ブログ(2026年7月9日) / Google Ads公式ヘルプ(AIコンテンツラベル) / TechCrunch(検証なしの指摘)





