NVIDIAは2025年9月、Intelに50億ドルを出資して世界を驚かせた。そして2026年5月、今度はそのIntelの本丸——データセンター向けCPU市場——に、自社製CPU「Vera(ヴェラ)」の単体販売で踏み込んだ。出資しながら殴り込む、堂々の二正面作戦である。
GPUの王者がなぜCPUを作るのか。Veraの中身と狙いを、時系列の誤解も正しながら整理する。
88コアの自前設計「Olympus」
Veraの最大の特徴は、コアそのものをNVIDIAが自分で設計したことだ。前世代のGraceはArm社の既製コアを買って組み立てていた。Veraの「Olympus」コアは完全カスタム。既製服からオーダーメイドへの乗り換えである。
| 項目 | Grace(前世代) | Vera(新) |
|---|---|---|
| コア | Arm既製 Neoverse V2 ×72 | 自社カスタム Olympus ×88(176スレッド) |
| メモリ帯域 | 512GB/s | 1.2TB/s(2.4倍) |
| メモリ容量 | 最大480GB | 最大1.5TB(3倍) |
| GPUとの接続 | NVLink-C2C 900GB/s | NVLink-C2C 1.8TB/s |
時系列は誤解が多いので正確に書いておく。初公開は2025年3月のGTC。量産宣言が2026年1月のCES。そして単体CPUとしての販売発表が2026年5月末で、実際の提供は2026年秋からだ。
Rubinと二人三脚の「トークン工場」
Veraの本業は、新型GPU「Rubin」の相棒である。ラックにRubin 72基とVera 36基を詰め込んだ「Vera Rubin NVL72」が今年の主力で、NVIDIAはAIの返答生成コストを前世代の約10分の1にできると謳う(公称値)。ちなみにRubin向けの高速メモリHBM4を量産出荷するのが、先日ナスダック上場したSK hynixやマイクロンだ。役者は裏でしっかり手を組んでいるわけだ。
量産宣言の場となったCES基調講演は、下の動画でも確認できる。
出資先と殴り合う二正面作戦
単体販売の発表でNVIDIAは、Veraを「エージェント向けCPU」と位置づけ、x86比1.8倍のタスク処理性能を掲げた(これも公称値だ)。前世代のGraceはすでに累計約250万個が出荷済み。CFOはCPU事業だけで今年度200億ドルの売上を見込むと語り、あるアナリストは「FY2027に400万個、Intel/AMDのサーバーCPU市場の3分の2を奪う」とまで予測する。
興味深いのはIntelとの関係だ。50億ドル出資して株主になりながら、Xeonの市場を正面から取りに行く。「友達になってから財布を狙う」この距離感は、GPUで築いた支配力があればこそ許される芸当だろう。
秋の「単体デビュー」までに確かめたいこと
注意点も添えておく。性能値(1.8倍、コスト1/10)はすべてNVIDIAの公称で、第三者ベンチマークはこれから。「主要AI企業がすでに採用」といった報道も一次確認が取れていないものが混ざる。
それでもVeraは「NVIDIAがCPUの会社にもなる宣言」と読むのが自然だろう。GPU・CPU・ネットワークを一社で握る垂直統合は、AIインフラの価格決定権を丸ごと握ることを意味する。単体提供が始まる2026年秋、そしてIntel/AMDの対抗発表——次の半年は、サーバーの心臓部をめぐる30年ぶりの政権交代劇になるかもしれない。メモリ側の主役たちの動きは「AIがメモリを食い尽くす」も参考にどうぞ。
出典: NVIDIA開発者ブログ(Rubinプラットフォーム詳細) / NVIDIA公式(CES 2026) / TechPowerUp(単体販売発表)。性能値はNVIDIA公称。





