Claude CodeもCodex CLIも存在しなかった2023年、ターミナルでAIとペアプログラミングする文化を最初に作ったのはAider(エイダー)というオープンソースだった。GitHubスター約4.8万。AIの実力を測る「polyglotベンチマーク」の名前に見覚えがあるなら、それもAider発だ。
ただ、2026年にこの名前を検索したあなたに、最初に伝えるべき事実がある。Aider本体の開発は、2025年夏を最後に事実上止まっている。この記事では、その経緯と「それでも使う価値があるケース」、そして開発を引き継いだ後継フォークまで、確認できた事実で整理する。
先に現状確認: 開発は止まっているのか
数字で見るのが早い。最後の機能リリースはv0.86.0(2025年8月)。その後はパッチと新モデルの登録程度で、今月のコミット数はゼロだ。GitHubには「Where is Paul?(作者はどこへ?)」というIssueまで立ち、作者のPaul Gauthier氏本人が「残念ながら最近は他のプロジェクトで手一杯だ」と回答している。リポジトリは生きているが、単独メンテナ体制のまま眠りに入った——それが正確な描写だろう。
ただし物語には続きがある。コミュニティが開発を引き継いだフォーク「cecli」(旧aider-ce)が週次ペースでリリースを重ねており、MCP対応やエージェントモードなど「現代の装備」を追加している。Aiderの思想を今のツール水準で使いたい人の受け皿はここだ。
aider.chat Aider 公式サイト 一次情報。ドキュメントとpolyglotベンチのリーダーボード(更新は2025年秋で停止)。それでもAiderが発明したものは現役だ
開発が止まっても、Aiderの発明は業界標準として生き続けている。代表がリポジトリマップ——コード全体から関数やクラスの「見出し」だけを抽出し、限られたトークンで大規模プロジェクトの地図をAIに渡す仕組みだ。git自動コミット(編集のたびに説明つきでコミットし、/undoで即取り消せる)も、後発ツールのチェックポイント機能の原型といっていい。
| コマンド | 何をするか |
|---|---|
| /add・/drop | 編集対象のファイルを文脈に入れる/外す(Aiderの核心) |
| /ask・/code | 質問だけ/編集指示 |
| /architect | 「設計モデル+編集モデル」の2段構成で実行 |
| /undo | AIの直前コミットを取り消し |
| /test・/lint | テスト・lintを実行し、失敗したら自動修正へ |
| /web・/paste | Webページや画像を文脈に追加 |
| /voice | 音声で指示(OpenAIキー必要) |
| /tokens・/map | トークン使用量/リポジトリマップの確認 |
エージェント疲れの受け皿、という現在の価値
興味深いのは、開発停止が知られた今も「OG(元祖)に戻った」という開発者の声が絶えないことだ。理由は設計思想にある。Claude Code系のエージェント型は自分でファイルを探し、実行し、時に頼んでいないコードまで書き散らかす。対してAiderは人間が/addで渡したファイルしか触らない。この「檻の狭さ」が、暴走への疲れと、トークン消費の少なさ=圧倒的な安さにつながっている。DeepSeekやOllamaのローカルモデルを繋げば、実質無料のペアプログラマにもなる。
筆者の整理はこうだ。「任せる快感」はエージェント型が上。「制御する安心」と「財布への優しさ」はAider型が上。両者は対立ではなく用途違いで、触られたくない本番コードの外科手術のような場面では、今もAiderの流儀に分がある。
2026年に選ぶなら、この3択
①Aiderの思想が刺さった人 → 後継フォークのcecliを。Aiderの操作感のまま、開発が続いている。②安さ最優先の人 → 本家Aider+安価なモデル(DeepSeek等)の組み合わせは今も動く。ただしドキュメントの推奨モデルが2025年前半で止まっている点は頭に入れて。③今から1本目を選ぶ人 → 正直に言えば、Gemini CLI(無料)やClaude Codeから入るほうが幸せだ。Aiderは「歴史と思想を知ってから戻ってくる場所」に近い。
ツールは死んでも思想は残る、とはよく言うが、Aiderはまだ半分生きている。ターミナルでAIとコードを書くという行為の原点として、一度は触れておいて損のないソフトウェアだ。pip install aider-chat——墓参りではなく、源流訪問として。
出典: Aider-AI/aider(リリース・コミット履歴) / Issue #4613(作者本人の回答) / 公式ドキュメント(コマンド) / cecli(後継フォーク)。2026年7月21日時点。





