ヒューマノイドロボットの「生産国」は、事実上ひとつに決まりつつある。米調査会社Smart Analytics Global(SAG)の集計によれば、2026年上半期に世界で出荷された約19,100台のうち、97%超が中国メーカー製だった。米Bloombergが8月10日に報じた。
この数字を見て思い出すのは、TeslaのOptimusでも1XのNEOでもなく、ドローンの歴史だ。10年前、ドローンは米中が並走する市場だった。気づけばDJIが世界の空を独占していた。同じ映画の冒頭を、いま観ているのかもしれない。
19,100台の内訳——首位は上海のAgibot
成長の速度も凄まじい。前年同期の約5,100台から1年で3倍超。しかも受注ベースではなく出荷ベースの数字だ。当サイトで検証したUBTechの家庭用U1や工場で働くWalker S2のように、中国勢は「発表」ではなく「納品」の段階に入っている。
なぜ中国だけが量産できるのか
理由は3層ある。第一に部品の垂直統合——モーター、減速機、バッテリー、センサーの供給網が国内で完結する。これはドローンでDJIを勝たせた構図と同じだ。第二に価格。Unitreeの小型機は数十万円台からで、研究機関や企業が「とりあえず10台」を買える。買われた分だけ実地データが集まり、改善が速くなる。第三に国策で、地方政府がロボット企業への補助と導入先の斡旋を同時にやる。
一方の米国勢は、TeslaのOptimusが量産前、FigureやApptronikはパイロット導入の段階。性能のデモでは互角以上でも、出荷台数という体力測定ではまだ土俵に上がっていない。日本勢に至っては、この統計に名前が出てこない。
数字を疑う視点も持っておく
ただし、この97%を「勝負あった」と読むのは早い。19,100台の多くは研究用・展示用・パイロット導入で、家庭や工場で毎日働いている台数ではない。UBTechのU1で見たように、中国メーカーの「出荷」には返金可能な予約が化けたものも混ざり得る。参考値として、Morgan Stanleyの2025年推計では中国シェアは約90%——集計方法で数字は揺れる、という点は頭に置いておきたい。
それでも方向は明確だ。台数が集まる場所にデータが集まり、データが集まる場所でフィジカルAIは賢くなる。日本の「ノエトラ」構想が狙うのもこの循環だが、出荷3%未満の側から97%を追う競争は、性能の競争ではなく生産体制の競争になる。次にこの統計が更新される年末、Agibotの44%がどう動いているか——ヒューマノイド市場の本当の勢力図は、そこで一度確定する。
出典: Bloomberg(2026年8月10日・SAG集計の報道) / 関連: 当サイト「UWORLD U1とは」「1X NEOはいつ届く?」





