「レシートをOCRしたい」「音声をテキストにしたい」——そんな機能の見積もりで、真っ先にクラウドAIの料金表を開いていないだろうか。実はその多くは、iPhoneのOSに最初から入っている純正フレームワークで、課金ゼロで実装できる。
この記事は、2026年8月時点でiOS開発者が無料で使えるAI系フレームワーク9つの棚卸しだ。派手な発表の裏で世代交代が進んでいるものもあり、「今から使うならどのAPIか」も添えている。
まず全体地図——9つの分担
| フレームワーク | できること | 使えるOS |
|---|---|---|
| Foundation Models | LLM(要約・生成・ツール呼び出し) | iOS 26〜 |
| Vision | OCR・画像解析・文書構造の認識 | iOS 13〜(新API 18〜) |
| Speech | 音声の文字起こし | iOS 10〜(新API 26〜) |
| Translation | オフライン翻訳 | iOS 17.4〜 |
| Natural Language | 形態素解析・感情分析 | iOS 12〜 |
| SoundAnalysis | 300種以上の環境音の分類 | iOS 13〜 |
| Image Playground | 画像生成 | iOS 18.1〜 |
| Writing Tools | 校正・書き換えUI | iOS 18系〜 |
| App Intents | Siri/Apple Intelligence連携の土台 | iOS 16〜 |
いま一番「おいしい」3つ
① Vision(OCR)。日本語の印刷文字も実用精度で読める定番だが、iOS 26の新リクエストではレシートや表の「構造ごと」認識できるようになった。行と列を保ったまま取れるので、家計簿系アプリの実装難度が一段下がった。古い記事に載っているVNRecognizeTextRequestは旧世代で、今から書くならasync対応の新APIを選びたい。
② Speech(文字起こし)。iOS 26で追加されたSpeechAnalyzer/SpeechTranscriberが本命だ。長時間の録音をオンデバイスで文字起こしでき、逐次結果もAsyncSequenceで流れてくる。クラウドの文字起こしAPIは分単位の課金が普通なので、ここを純正に置き換えるだけで原価構造が変わる。旧SFSpeechRecognizerとは設計が別物なので、検索結果の古いコードに注意。
③ Translation。iOS 17.4から使える翻訳フレームワークで、言語パックを落とせばオフラインでも動く。翻訳ボタン1個のためにサブスクAPIを契約する時代は終わった。
注意して使う2つ
Image Playgroundは、アプリから画像生成を呼べる面白いAPIだが、プログラム生成用のImageCreatorに非推奨(deprecated)表記が出ている。画像まわりはFoundation Models側への統合が進むとみられ、新規実装は少し様子見が賢い。Core MLも健在だが、WWDC26で次世代スイート「Core AI」が発表されており、自前モデルを積む計画があるなら移行の流れを追っておきたい。
組み合わせると「無料のAIパイプライン」になる
単品より、組み合わせたときが本領だ。たとえば「会議メモアプリ」なら、Speechで文字起こし→Foundation Modelsで要約とタスク抽出→App IntentsでSiriから呼び出し。「旅行レシート整理」なら、VisionでOCR→Natural Languageで店名抽出→Translationで現地語レシートも日本語化。どちらも外部API費用は1円もかからない。
LLM部分の詳しい実装はFoundation Modelsフレームワーク解説に、Kit全体から個人開発のネタを探す視点はApple公式Kit図鑑にまとめている。
課金の前に、棚卸しを
クラウドAIが悪いわけではない。ただ、順番の問題だ。まずOSに入っている無料の道具で組み、足りない部分にだけ課金する——この順で設計したアプリは、ユーザーが増えるほど強くなる。あなたのアプリの機能リストのうち、いくつがこの9つで置き換えられるだろうか。見積もりの前に、一度数えてみてほしい。
出典: Apple Developer「RecognizeDocumentsRequest」 / 同「SpeechAnalyzer」 / 同「Translation」 / 同「ImagePlayground」 / Apple Intelligence for developers(いずれも2026年8月時点)





