ターミナル(黒い画面にコマンドを打つ道具)は長らく、「速い・多機能・OSになじむ」の3つから2つしか選べないと言われてきた。その常識に「全部取り」で挑むのが、HashiCorp共同創業者のMitchell Hashimoto氏が個人で作り始めたターミナル「Ghostty(ゴースティ)」だ。2024年12月に1.0を公開すると、開発者のあいだで一気に広まった。
何が新しいのか。ざっくり言えば、GPUで描画するから速く、設定ゼロでもすぐ使えて手軽で、しかもmacOS・Linuxそれぞれの「本物のネイティブアプリ」として作られている。順に見ていこう。
Ghosttyは何がちがうのか
Ghosttyの売りは、まず速さだ。画面描画をGPU(画像処理が得意な半導体)に任せ、大量の文字がなめらかにスクロールする。次に手軽さ。何も設定しなくても実用的に使え、数百種類のテーマを内蔵し、OSの外観に合わせて明暗も自動で切り替わる。そしてネイティブであること。共通の中核libghosttyの上で、macOS版はSwift、Linux版はZig+GTK4で作られ、タブや分割がOS標準の作法どおりに動く。ライセンスはMIT(オープンソース)、2026年時点の最新は1.3系だ。
「動くところ」を見るのが早い
文章で速さを説明するより、実際の画面を見るほうが早い。公開時の紹介動画がわかりやすい。
なぜ今、これがウケるのか
理由は2つある。ひとつは、Web技術で作った「なんちゃってネイティブ」ではなく、本物のOS標準の見た目と操作で動くのに、専用ターミナル並みに速いこと。この両立が長らく難しかった。もうひとつは時代の後押しだ。バイブコーディングやClaude Codeのように、AIとの開発をターミナルで回す場面が増えた。作業の土台であるターミナルが快適だと、その上のAI作業も気持ちよく進む。正直に言えば、筆者はGhosttyの「設定しなくても整っている」思想がいちばん好きだ。道具の準備に時間を溶かさず、すぐ本題に入れる。
おもしろいのは開発の背景だ。Ghosttyは2025年に非営利団体(Hack Clubの傘下)へ移り、VC(投資家)のお金に頼らない運営を選んだ。作者いわく、道具を「売り物」ではなく「みんなのもの」として育てたい、という姿勢の表れだという。
ghostty.org Ghostty 公式サイト ダウンロード、ドキュメント、テーマ一覧。まずは自分のOS向けを入れて、設定ゼロの状態を体感してみるのが早い。「道具の道具」を整えるという贅沢
ターミナルは、コードを書くための道具を動かすための道具——いわば裏方の裏方だ。そこにここまで手をかけたGhosttyの登場は、開発体験そのものが競争軸になった時代を象徴している。もし普段のターミナルに小さな不満があるなら、週末に一度入れてみてほしい。設定をいじらないまま「あ、速い」と感じたら、それがGhosttyの答えだ。
出典: Ghostty公式「About」 / Mitchell Hashimoto「Ghostty 1.0 is Coming」 / GitHub: ghostty-org/ghostty。2026年7月14日時点。





