ノートアプリの二強が、正反対の道を選んだ。1億人が使うNotionは2025年9月、最大20分間ひとりで働き続けるAIエージェントを本体に組み込んだ。一方のObsidianは、公式ロードマップにAIの文字が1つもない。
先に立場を明かすと、どちらもAI時代の「正解」だ。ただし哲学がまるで違う。この記事では両者の戦略と料金を正面から比べ、あなたがどちらを選ぶべきかまで答えを出す。
1億人のNotionは「AIまみれ」を選んだ
Notionの変化は2025年9月18日の「Notion 3.0」で決定的になった。搭載されたAIエージェントは、指示ひとつで数百ページを横断し、文書作成からデータベース構築までを最大20分間、自律的にこなす。
2026年7月の3.6ではさらに、ClaudeやCursorといった外部のAIエージェントとの連携も開いた。AI議事録は誰が話したかまで区別する。「ノートアプリ」というより、AIが常駐する仕事場に近づいている。
ただし財布には注意がいる。2025年5月の改定で、AIの本格利用は実質ビジネスプラン以上に限定された。無料プランのAIは累計20回ほどの「お試し」で打ち止めだ。
notion.com Notion 3.0 — AIエージェント搭載(公式リリースノート) 20分間の自律稼働・数百ページ横断などエージェントの仕様が読める一次情報。10人のObsidianは1行もAIを書かない
対するObsidianの運営チームは、猫1匹を含めて約10人。投資家はいない。そして本体にAI機能を実装する予定も、公表されている限りない。
怠けているわけではない。Obsidianのノートはすべて、パソコンの中に置かれるただのテキストファイル(Markdown)だ。だからClaudeのようなAIエージェントは、特別な接続なしにそのまま読み書きできる。2026年2月に追加されたコマンドライン操作(CLI)も、人間ではなくAIが触るための「配管」として注目された。
つまりObsidianの戦略はこうだ。AIは自分で作らない。その代わり、どのAIからも触りやすい「開かれた保管庫」になる。本体にAIを入れないことが、結果的にいちばんAIと相性のいい設計になっている——この逆説が2026年のObsidian人気の核心だと筆者は見ている。
料金と機能、正面から比べる
| 項目 | Notion | Obsidian |
|---|---|---|
| 基本料金 | 無料(機能制限あり) | 完全無料(商用利用も可) |
| 個人有料プラン | プラス ¥1,650/月 | 不要(本体は無料) |
| AIを使う条件 | ビジネス ¥3,150/月(年払い時)〜 | プラグイン+各自のAIキー(0円〜従量) |
| ノートの保存場所 | Notionのクラウド | 自分のPC(ローカル) |
| 端末間の同期 | プランに含む | 公式Syncは月$4〜(暗号化つき) |
| 共同編集 | 強い(リアルタイム) | 弱い(公式機能なし) |
| 運営 | 従業員数百人・評価額110億ドル | 約10人・投資家ゼロ |
どちらにも耳の痛い話がある
Notionの弱点は「引っ越しの難しさ」だ。データベースの連携やビューはNotion独自の形式で、書き出してもきれいには持ち出せない。ページが増えると動作が重くなるという定番の不満もある。そしてAI強化のたびに、実質的な値上げがついて回ってきた。
Obsidianの弱点は「最初の坂道」だ。プラグインを選び、設定を整えるまでが初心者にはつらい。AI連携もすべて非公式プラグイン頼みなので、品質もセキュリティも自己責任になる。クラウドのAIにノートを送る設定では、機密メモの扱いに注意がいる(AIキーの安全な管理は過去記事「AI時代の.env代替」も参考に)。
「便利さを借りる」か「面倒ごと込みで持つ」か
住まいに例えるなら、Notionは管理人付きの賃貸マンションだ。掃除も警備も家賃に含まれ、快適だが、ルールと家賃は大家が決める。Obsidianは持ち家に近い。メンテナンスは自分持ちだが、壁に何を貼ろうと自由で、追い出されることもない。
チームで使う、非エンジニアが多い、議事録やタスク管理までAIに任せたい——ならNotionが速い。書いたものを10年残したい、AIエージェントと直結させて遊びたい、月額を増やしたくない——ならObsidianだ。ちなみにNotionは公式MCPサーバーも出しており、MCPサーバー人気ランキングにも顔を出している。両者の違いは優劣ではなく、データを「誰に預けるか」の哲学の違いである。
出典: Notion 3.0リリースノート(2025年9月18日) / Obsidian公式ロードマップ / Steph Ango「File over app」 / 料金は各公式ページ(2026年7月確認)





