「背景をもう少し夕方っぽくして」。マイクに向かってそう話すと、Photoshopが画像を直す——2026年のPhotoshopは、そんな対話型のAIアシスタントをベータ搭載し、生成AIまわりを一気に作り替えてきた。
今年の変化は「機能が増えた」より「選べるようになった」が正しい。生成に使うAIモデルを、Adobe純正のFireflyだけでなくGoogleやBlack Forest Labsのモデルから選べるようになったのだ。2026年上半期のアップデートを、実務目線で総まとめする。
- AIアシスタント: 会話で編集を指示できる対話UI。Web版・モバイル版で3月からパブリックベータ。
- Firefly Image 5: 新世代の生成モデル。画像全体のスタイル変更や「オブジェクトを回転」が可能に(4月)。
- マルチモデル対応: 生成塗りつぶし等でFirefly / Google Gemini 3(Nano Banana Pro) / FLUX.2 Proを切り替え可能に。
「純正AI縛り」をやめた、という事件
今年いちばんの方針転換は、マルチモデル対応だ。これまでPhotoshopの生成機能は自社のFirefly一択だった。それが、Googleの画像モデルやFLUXを「エンジン」として選べるようになった。カメラ本体はそのままに、レンズを交換できるようになったと思えばいい。
これはAdobeの自信と危機感の両方の表れだ。画像生成AI単体では競合が強い。ならば「どのAIで作っても、仕上げと管理はPhotoshopで」という母艦の座に軸足を移す。FigmaがAIを飲み込んだ構図と同じ判断を、Adobeもした形になる。
実務で効く順に見る新機能
| 機能 | 何ができる | 効く場面 |
|---|---|---|
| AIアシスタント(β) | 会話で編集指示。作業の言語化 | 定型レタッチの高速化・学習 |
| Firefly Image 5 | スタイル一括変更・オブジェクト回転 | 商品写真の角度違い量産 |
| 調和(Harmonize) | 合成素材の色・光を背景に自動一致 | 合成バナーの「浮き」解消 |
| Firefly Boards連携 | 発想ボードとPhotoshopの双方向往復 | チームのラフ→本制作の受け渡し |
地味な本命は「調和」だと筆者はみている。合成写真の不自然さの正体は、ほぼ光と色の不一致だ。そこが1クリックで解決するなら、合成のスキル差は大きく縮む。使い方の実践は生成塗りつぶし実践編で詳しく扱う。
買い切り派・他ツール派はどうするか
気になるのはコストだろう。AI機能の多くは生成クレジット制で、ヘビーに回すなら上位プランが要る。「たまに画像を直す」だけなら、Canvaや無料ツールで足りる場面も正直多い。
それでもPhotoshopが握り続けているのは、レイヤー・マスク・色管理という「仕上げの土台」だ。AIがどれだけ描けても、印刷や広告の入稿品質に持っていく最後の1マイルはここで決まる。AIで入口が広がり、出口は変わらずプロの道具——2026年のPhotoshopは、そういう二重構造になっている。
出典: Adobe公式ブログ(2026年3月11日) / 同(2026年4月30日アップデート) / PhotoshopNews。機能・提供状況は2026年7月12日時点。





