AI同士の対戦で順位が決まるポケモンカードAIコンペには、実はもう一つの戦場がある。「Strategyトラック」——コードの強さではなく、戦略を説明するレポートで競う部門だ。〆切は9月14日。上位8チームに各3万ドル、勝ち上がれば追加で5万ドルが待つ。
「レポートで賞金?」と不思議に思うかもしれない。だがこの設計こそ、主催者(ポケモン社×松尾研究所×HEROZ)の狙いが最もよく表れた部分だ。第2幕の中身と、勝ち筋の考え方を整理する。
- 何を出す: Simulationトラックに提出したAIについて、その戦略ロジックを解説するレポート。
- 審査軸: AIの安定性、デッキ設計の思想、Simulationでの実績——「強さの再現性」が問われる。
- 日程: 〆切9月14日。Simulation(〆8月17日)の後にレポートをまとめる二段構え。
なぜ「説明」に賞金を出すのか
機械学習コンペの世界には昔から皮肉がある。優勝モデルの中身が「なぜ強いのか作者にも説明できない」問題だ。実務や研究に還元するには、強さの理由が要る。Strategyトラックは、その理由の言語化そのものに値札を付けた。
審査軸を見ると意図はさらに明確だ。順位だけでなく「安定性」と「デッキ設計の思想」が評価される。まぐれの1位より、思想があって再現できる3位が勝てる設計——AIの説明可能性という研究テーマを、賞金でドライブする実験ともいえる。
勝ち筋——「強いAI」より「語れるAI」
この構造を踏まえると、取るべき戦略が変わってくる。Simulationの順位を1つ上げる改良より、「なぜその設計にしたか」を最初から記録しながら開発するほうがStrategyでは効く。実験ログ、ボツにした案とその理由、デッキ選択の根拠——開発日記がそのままレポートの素材になる。
これは実務のAI開発と同じ作法だ。人気のAIツール群が証明した通り、使われるAIは「性能が高いAI」ではなく「挙動を説明できるAI」である。ポケモンカードを題材に、その筋肉を鍛えられるのがこのトラックの実利だ——賞金を逃しても、レポートはそのままポートフォリオになる。
kaggle.com PTCG AI Battle Challenge Strategy(Kaggle公式) レポートの要件・審査基準・提出方法の一次情報。Simulation側の成績も評価に含まれる点に注意。いまから参加しても間に合うか
正直に計算しよう。Simulation〆切(8月17日)まで約1ヶ月、レポート〆切(9月14日)までさらに1ヶ月。ゼロからAIを書いて上位を狙うのは厳しいが、「そこそこのAI+一級のレポート」という勝ち筋は、まだ十分に開いている。公開されている対戦ログから上位AIの傾向を分析し、それ自体をレポートの核にする手もある。
子どもの頃に遊んだカードゲームが、AI研究の題材として賞金付きで帰ってきた。この夏、あなたの週末を何に使うかの選択肢として、悪くないはずだ。
出典: Kaggle「PTCG AI Battle Challenge Strategy」 / 公式サイト / PokeBeach。日程・賞金は2026年7月12日時点。





