会社でAIを使うとき、実は「どのモデルが賢いか」より先に決まってしまう問いがある。「どのクラウドで動かすか」だ。Azure OpenAI(AOAI)、Amazon Bedrock、Google Vertex AI——三大クラウドのAI基盤は、名前は並列でも設計思想がまるで違う。
この記事は、3つを「何が違い、誰がどれを選ぶべきか」で整理する比較ガイドだ。結論はシンプルで、勝敗ではなく相性の問題である。自社の状況を3つの質問に当てはめれば、答えはほぼ自動的に決まる。
- AOAI: OpenAIモデル(GPT系)の専属窓口+Microsoftの企業統制。M365/Teamsの会社なら本命。
- Bedrock: Claude・Llama・Mistralなど多社モデルを1つのAPIで。AWS漬けの会社の選択肢。
- Vertex AI: Gemini独占+データ分析基盤との一体感。BigQuery中心のデータ企業向き。
三者三様の設計思想を一枚で
| Azure OpenAI | Amazon Bedrock | Vertex AI | |
|---|---|---|---|
| 使えるモデル | OpenAI系のみ(専属) | Claude/Llama/Mistral等 多社 | Gemini(独占)+Model Garden |
| 強み | M365/Entra ID統合・統制 | モデルの乗り換え自由度 | データ分析・ML基盤との一体化 |
| 課金の癖 | トークン+専用容量(PTU) | 推論+ガードレール等が別建て | モデル+周辺GCPサービス |
| エージェント機能 | Azure AI Agent Service | Bedrock Agents | Vertex AI Agent Builder |
選び方は「3つの質問」で決まる
質問1: 社内の土台はどこか。Microsoft 365とTeamsで仕事が回っている会社は、認証も権限管理も既にMicrosoftにある。AOAIなら、その統制の中にAIが素直に収まる。法務が「Azureなら承認済み」というケースも実務では決定打になりやすい。
質問2: モデルを乗り換えたいか。オープンモデルの台頭や値下げ合戦を見るに、「今の最強」は数ヶ月で入れ替わる。Bedrockの多社モデル方式は、この乗り換えを設定変更レベルにする保険だ。逆にGPT系に決め打ちできるならAOAIの深い統合が勝る。
質問3: AIに食わせるデータはどこにあるか。BigQueryに分析基盤がある会社なら、Vertex AIはデータからAIまでが地続きになる。長大な文脈を扱うGeminiの強みも、大量の社内文書を持つ企業ほど効く。
2026年の本当の争点は「エージェント」
3社の資料を読み比べると、いま力が入っているのはチャットではなくエージェント基盤だと分かる。社内APIやデータベースに接続して仕事を代行するAIを、どのクラウドの上で動かすか——Bedrock Agents、Vertex AI Agent Builder、Azure AI Agent Serviceは、その陣取り合戦の駒だ。
つまりこの選択は「チャットボットをどこに置くか」ではなく、「将来の自動化された業務がどのクラウドに住むか」の選択になりつつある。エージェントの運用コストが本格的に問われる前に、退路(マルチクラウド設計)を残しておくのが、2026年時点での筆者の推しだ。
迷ったときの雑な、しかし実用的な答え
最後に、身も蓋もない早見表を。「うちはOffice365の会社」→AOAI。「うちはAWSの会社」→Bedrock。「うちはデータの会社」→Vertex AI。クラウドAI基盤は、結局いちばん引っ越しコストが低い場所が正解になる。モデルの賢さは、どの道どこでも借りられる時代なのだから。
出典: CloudOptimo「An In-Depth Analysis」 / DEV Community「2026 Enterprise Comparison」 / StackSpend。仕様は2026年7月12日時点。





